幸せのキセキ

4年以上も前からのオハナシ

そろそろ終わりかなと思った朝方に開いたお店の扉

“あっ”

思わず口をついて出た言葉は少しの驚きをはらみつつも良くも悪くもあまり感情のこもらないものだった

昨日も来てくれた近所のお店のマスターらしい若くてオシャレな彼に対して

僕は心の中でジャッジを下せずにいた

面白そうではあるが掴み所のない飄々した風貌は僕と合うようには思えなかった

彼から“好意”の様なものを感じる事も出来なかった

にも関わらず昨日に続いてのご来店

名刺交換をしながらのザックリとした自己紹介で

“ポンです”と言った彼との出会いはそんなありきたりで特別ではなかったと記憶している

 

その後、かなりの頻度で色々な人を連れて来てくれた

回数を重ねる毎にうっすらとした初対面の相手に対する感情の防御壁は崩れ去り

彼の人間性に触れるやすっかり彼の魅力に魅せられた

ある日淀川の河川敷にて朝っぱらから呑んでいた時の事

生い茂るクローバーを見ながら

“よつ葉のクローバーなんて幻や!そもそも幸せが幻やからな!?”

と訳の解らない事を言いながら酔っぱけていた僕に

“須藤さん!!”

と満面の笑みを浮かべ呼びかけたポンちゃんの手にはよつ葉のクローバーが!

1分とたたずに幻の幸せを探し出してきた

感心する僕は次の瞬間更に驚愕することになる

“好き、嫌い、好き、嫌い アカン嫌いやあ!!”

???!!??!?!!!

4枚でまさかの花占いならぬ草占い

幸せを見つけるセンス、瞬時にそれをベットする潔さ、それら全て笑い飛ばせる器の大きさ!!!

4年半前の春の衝撃

 

“ちょっといい娘がいるんですよ、エニーさんの知り合いなんですけど…”

他人の色恋にさして興味なんぞはないが

楽しそうな笑みを浮かべながら話すポンちゃんを見るに少し興味がわく

その見つけたものはただの暇つぶし的な興味なのか

些細な楽しみの種か未来の大いなる幸せの芽なのか

“スタイルがよくてノリがいいんですよ”

と聞いていた通りアサミちゃんは確かにスタイルは良かった

ノリも良かったというかノリに関してはスタイリッシュな外見からは意外なほど

もはや“大丈夫か”と思うほど良すぎた

今はなき朝の“しょんべん横丁”に呼ばれて来たアサミちゃんは疑いようがないOLだった

ここは朝のOLさんの来る場所ではない

またある時は

“今日はお腹が痛いので休ませてください”

と会社に電話し

“やっちゃった笑い”を浮かべるアサミちゃんの右手にはしっかりと酒の入ったグラスが握られていた

おいおい社会人失格ですよ

ノリの良さから色々と笑いを提供してくれた彼女ではあるが

何より僕を驚かせたのはアサミちゃんの“愛情に対しての真っ直ぐさ”だった

 

そもそも初めて会った時から分かり易くポンちゃんに対する愛情は見て取れた

周りに“好きさ”をアピールしている煩わしさは全くなくただ“好きさ”が溢れている

こういう正直な娘は好きだが

次々に幸せを見つけ新たな環境を創り出しアクティブに動くポンちゃんに

アサミちゃんの愛情はまっすぐ過ぎる気がした

事実、芳しくない話しをよく聞かされた

話は聞いてあげれるが僕はいつも自分のスタンスを明確にする

僕はポンちゃんの友達でありポンちゃんあってのアサミちゃんであり

ポンちゃんあってのアサミちゃんでしかない以上余計な協力はしない

ポンちゃんからは別れる旨の話を何度も聞いた

傍から見ていて2人の幸せは想像しがたく難しいように思えた

 

昔ある人が言っていた

人間には2種類ある

人生色々な事があり悲しくて泣く事もあるだろう

そしてやがて泣き止んだ時に強くなるのか、弱くなるのか

アサミちゃんはよく泣いていた

ポンちゃんの名誉の為に言っておくが

ポンちゃんが悪いと言うよりも些細な事でよくピーピー泣いていた訳ですが
(色々な人が色々な場所で色々な場面で目撃していた事でしょう)

その度に強くなっていったように見えた

泣きながらも必死に寄り添い離されないようについていく様は

健気ではじけるように美しかった

奇跡が起きそうな気がした

奇跡は起きようとしていた

2人の最高のカタチ

 

数年後朝方に1人でポンちゃんが呑みに来てくれた

“今日は喧嘩したから帰りたくないんですよ。須藤さん呑みに行きましょうよ”

十三にて久々の二人呑み

“今日も・・・で・・・で腹立ったから婚姻届破ったりましたわ”

ん?!

思ったより話は進んでるようだ

酒がみるみる胃袋に流し込まれていく

珍しく愚痴るポンちゃんの話を聞きながらも随分前から感じていた感情が時折顔を覗かせる

クールな彼があまり人に見せようとしないが隠せなくなっている

アサミちゃんへの愛情

 

10:00am過ぎまで呑みもうそろそろ帰ろうと店を出た

“須藤さん役所に行きたいから付き合ってくれません?”

なんとなく話はみえたが僕は基本的に性格が悪いので敢えて聞いてみる

“いいけど何しに行くん?”

“いや~破ってもーたから婚姻届貰いに行こうかな”

照れ笑いが素敵過ぎる

“また破るかもしらんから念のため6枚もらっとこ。後、離婚届も2枚やな”

でた!!相変わらずブッ飛んだポン発想!!

“須藤さんも貰っといたらいいですやん。何があるかわかんないっすよ”

確かにね

でもその何かは6枚全部破ってもた時にって事にしとくか

結局最後は笑顔やもんなとつられて笑顔になりながら帰ったその日の数日後

最高の笑顔で2人婚姻届を見せるその姿をFBで見たのだった

 

そして先日結婚式に呼んで貰った僕は

舞い上がる風船を眺め

テキーラでの乾杯という未だかつて体験したことのない乾杯をしながら

“昔知り合いの結婚式で全員でテキーラで乾杯ってした事あるわ”

と誰かに一生話し続けるんやろうなぁと思いつつ

この2人といると常に笑顔になるよなぁと

溢れる笑顔と未来の素敵な思い出話を貰いながら

ご機嫌すぎる2人の姿を見てなんとも言えず幸せな気持ちになった

 

これが4年半前から僕が見てきた大好きな2人の最高の幸せの軌跡

 

2016 8 4 7:48

須藤 利浩

 

 

 

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