拝啓、西中島を去る君へ

決断というものは常に尊重されるべきであり

友としては応援しかできない訳だが

君の成功を切に願っている一友人より

心をこめて

.

十数年前に約3年ほど僕は西中島と新大阪の間で

今はなきWAZZという店で支配人などという仰々しい肩書きで働かせて貰っていたのだが

色々あってもうこれ以上ここでは働けないと思い

年齢的にも今から働き口を探し

一からまた築いて行く苦労というのは考え難く

独立以外の選択肢は自ずとなくなり退路は消えた

時間を遡るような事をするよりも直近で働いていたエリアの近くの方が色々とやりやすいのではと

西中島でBARをやるという決断に至った

物件もみつかり内装工事にとりかかって間もなく

ある程度は呑み歩いていたとはいえ

あまり人なり店なりとのつながりが深かったとはいえないと感じていた僕は

そういうものを求めてなんとなく歩き回っていた

.

ある日“BAR ぶらりん”と書かれた看板にすい寄せられるように階段をのぼり店の扉を開いた

思ったよりも広い店内には1人のマスターとお客さんが数人

カウンターに座った僕に話しかけてくれたマスターの印象は“THE 好青年”といった感じか

いつも通り

“マスターもよろしければ1杯どうですか”

と声をかけ一緒に呑ませてもらったのだが何かが引っ掛かる

上手く説明できないが警戒心は見えるのだがなんだか感じはいい

心の琴線に触れる嫌いじゃない感触

思い切って来月の16日に近所でBARを開店することになったとの主旨を伝えると

“フライヤーとかないんですか?よかったら置かせてもらいますよ”

とありがたい申し出をしてくれ

更にカウンターにいた別のお客さんに宣伝までしてくれた

お店も人もすっかり気に入った僕は

開店準備中の短い期間に1人で数人で何度か利用させて貰い

もう少し早く知っていたらもっと仲良くなれたかもしれないのにと惜しい気持ちになったのを覚えている

.

2011 12月16日いよいよBAR CLAYMOONオープン

圧倒的な不安とすこしの希望

オープン景気と誕生日でどうにかやりくりしていたが

自分自身の戦略ミスもあり緩やかなオープンとなったお店の

新規オープンという集客の為の大義は日々鮮度を失っていく

それなりな関係はそれなりでしかない故に客足は伸びない

2月に入り完全に当初の不安が的中してしまう

色々な事柄の関連と人との関係性に“深み”が足りないのではないかと感じていた不安

お客さんが来てくれない店のていをなしていない状況という根本的な問題に

“俺はダメかもしらんこのままじゃ潰れるかも…”と頭を抱える日々が続いた

.

2月半ば過ぎの終わりがけの店内で途方に暮れていた時

“あ~~~やっと来れた”

という声と共に開いた店の扉から現れた救世主は

あの時のBAR ぶらりんの石田さんだった

そして近所のBARのマスターと紹介されたお連れさんは

“スタンドエビスっていうバーのエニーっていいます”

と自己紹介したのだった

翌日は昨夜(朝?)2人に呼び出されて来ていた女の子が連れて来てくれた彼が

“近くでRimっていうバーをやってますポンです”

と言った

今尚お世話になっている特に恩義を感じる3人との出会い

僕にとっては運命のような夜

そうBAR CLAYMOONはあの夜に始まったのだ

いっしゃんが導いてくれたともいえるあの連夜の事は一生忘れない

.

イシダサンと呼んでいた呼び名がいっしゃんへと変わり

なんとなくコマジメな会話がバカ話と真面目な話というような極端にメリハリのある会話に変わり

10年以上

“須藤さん靖国神社行くなら連れてってくださいよ一緒に行きましょう”

と東京二人旅でいっしゃんは改札に切符を入れれなかった

靖国神社で感動した後

20分程度で浅草に飽き

お上りさん状態で六本木、渋谷と移動するたびに人が増え

最後の新宿では大所帯となり完全に西中島吞みになっていた。

ある土砂降りの朝当店にてam10:00過ぎまで寝て起きてくれず起きるなり

“どっか吞みに行きましょうよ、そうや鶴橋に焼肉食いに行きましょう”

というので

トランプで奇数なら帰る、偶数なら鶴橋、ジョーカー?そんなもん出んけど出たら広島でも行きましょかと

いっしゃんはまさかの2/54という確率のジョーカーを引き当て

お金はトランプで1番小さい数字をだした奴の払いって事で行った

日帰り広島トランプ3人旅。

あるなんの変哲もない週明けの夜

“須藤さん木曜日伊勢神宮行きません?”

“はぁ伊勢神宮~なんで?”

“天皇陛下の最後のご公務ですよ”

“マジか?そら行くわ!”

と急遽決まった伊勢神宮二人旅では待ち合わせに1時間半以上遅れて来て…

まあその後に沿道で2時間半以上待って

日本国旗振りながら天皇皇后両陛下を肉眼で見れて二人で感動できたからよかったけどね

伊勢神宮初めてやったし松坂牛も美味かったしね。

数え上げればキリがないが上記のような“巻き込み力”と“酔っぱけ力”

ある日他愛のないどうでもいい話で笑っていた時に

“あ!石田さんなんで僕には彼女がおらんねやろか?”

という僕の冗談に

“そら恋愛感覚が中学生で止まってるからちゃいます”

当時は僕があまり人に見せなかったというか隠していた本質をあっさり見抜く“洞察力”

披露宴の乾杯の音頭を任される程の大事な友人の結婚式当日の朝のBAR CLAYMOONにて

そろそろ帰ろうという僕に

ラス1いきましょうと繰り返し呑む事3度

いよいよ出ないと間に合わないという僕に

タクシー呼んでるし○○で△△やから俺は大丈夫と豪語しときながら

寝坊して披露宴が半分も過ぎた頃にやっと来るという“やらかし力”と“天然力”
(おかげ様で披露宴と二次会の両方で乾杯の音頭という大役をさせて頂きました)

常に張り巡らしてるアンテナに引っ掛ける“ゴシップ力”etc…

そしてそれら全てを統べる“ツッコミ力”

僕にとっては今1番頭を使って話せる唯一無二の相手であり

話していて最も楽しい相手の1人である君が西中島からいなくなったら

僕は誰と近現代史を語るのか?政治について話すのか?日本の今後について語り合えばいいのか?

そしていっしゃんの持ってきてくれる様々なエピソードは常にひねりが効いていて大好きなのだが

頻度が減ると僕のストレスは今より確実に増える事になるんだろう…

.

たとえ前向きな理由であろうと

知っている店が閉まるというのは

いつでも少なくない切なさを伴う

それが大好きな大事にしていた店なら猶更だ

“拝啓、炭の上から”は1月21日がLAST DAYということなのであと3日!!!

とは言え今後については全く心配していない

いっしゃんの高い人間力ならどこへ行っても

多くの人が彼の周りに集まり多くの人を笑顔にする楽しい店を創るだろう

“BAR ぶらりん“の時のように

“拝啓、炭の上から”のように

当ブログのタイトルがおかしくなるだけで

それが西中島なら嬉しく思うし

できればそう願いたいとも思うが難しそうな気がしている…

.

これが今生の別れという訳ではない

同じ空の下ならいつでも会えるし会いにいける

次のお店をやるその時はできれば連絡して下さい

君に切られない限り僕は押しかけるだろう

そしてまた他愛のないバカ話をしながら

どうでもいい事でバカ笑いしながら

めちゃくちゃにそしてご機嫌に吞みましょう

“これからもずっと仲良く“

今君にそれだけを望む

.

2023 1 19 am9:45

須藤 利浩

親愛なるJに降り注ぐ溢れんばかりの祝福を

あれ?俺にはきてないぞ… 

.

7年ぐらい前の朝方

久しぶりにエニシと話したくなりBAR レインボーの扉を開いた

“終わりかけ”という空気に包まれた店のカウンター内には見慣れない顔が

ほんの刹那頭に浮かんだ?マークは

最近聞いていた話を思い出しすぐに納得へと変わる

“あぁこの子か…“

エニーのとこの順平がこ~で、順平があ~で

と、概ねよろしげな噂で聞いていた通り

なんとなく感じのいい空気感と丸出しにした素人感

嫌いではない

それでも初対面で長々と延長戦に付き合わせるほど僕は厚顔無恥でもない

ある程度のお金を使い早々に切り上げようと

“ブラントンをストレートで2杯とギネス2杯ちょうだい”

“え?”

そらそーだ

まだ慣れていない彼にしてみれば一人客のファーストオーダーとはとても思えまい

ブラントン2杯は俺の1杯と君の1杯

ギネス2杯は俺のチェイサーと君のチェイサー

なるべく解りやすく説明した後

少し話した内容は今では覚えていない

.

数日後、今度は彼が吞みに来てくれた

他愛ない話をしたのだろう

何を話したのかは覚えていないが

その時に感じた事は覚えている

“コイツいいヤツだ”

それから頻繁にお酒にまつわる色々な事を聞きに来るようになり

順平くんと呼んでいた僕の呼び方から敬称がとれ

順平と呼ぶようになるのに大して時間はかからなかった

そんな順平は会った当初から

将来は独立して自分の店をもちたいと言っていた

.

ほどなく順平はBAR ヘブンスを任され店長となった

店どうしの付き合いだけでなく歳下の友達として

よく一緒にに吞みに行くようになってそれなりの月日が流れた

色々な事があった

仕事終わりの天満呑み、木津市場のうなぎ

休みやから昼から吞んだくれようと誘ってきながらなんのプランもない神戸呑み
(結局俺が順平カップルの接待しただけやん)

アラさんと3人で涙の新大阪駅呑み

数え切れんぐらいの”呑み”だけじゃなく

ポンコツな僕が携帯電話を失くすたびにヘブンスへ駆け込み助けて貰い…

ただ独立したいと言いながら

色々と話してくれるが話にリアリティーがない

全くもって具体的に動いている様子もない

十数軒の店で働き37歳まで怖くて独立できなかった僕には何も言う資格はない

というより僕がどうこういう話ではない

独立する事が偉いわけでもなく

色々な働き方や色々な道があるだろう

そして順平はたぶん独立はしないのだろう…

.

新型コロナウイルスが世間を賑わせ

働き方に制限がかかり

色々な人が色々な事を考えそれぞれの正義の元に色々な働き方を余儀なくされて数年

どっちが先だったかは定かではないが

順平から結婚と独立の報告があった

ヘブンスをやめる時期を決めて退路を断った順平の話には

リアリティーが伴いバラバラに見えた事柄が具現化していく

そしてとうとう

じいちゃんのやっていた散髪屋から名前を貰ってBAR オーミにします

11月にオープンできそうです

という報告をしに来てくれた

順平の数年来の夢が叶う

唯々嬉しくもあるが何よりも尊敬の念が強かった

正式にオープンの日が決まったら教えてくれ

と話してからしばらくして…

.

ある噂話が耳に入ってきた

“順平11月1日の1並びでオープンするらしいですよ”

あれ?俺は聞いてないぞ

あの人もこの人も開店お知らせラインがきてるらしい

人数制限?

とりあえず初日は避けといた方が無難かなと

3日目に行く事にしたのだが

思ったより早かったのでプレゼントが間に合わない

とりあえず密かに買い溜めていた秘蔵コレクションの酒を1本持って行く事にした

.

“順平おめでとう”

“ありがとうございます。でも須藤さんは初日に来てくれると思って待ってました”

おいおいおい!おーまーえー!!

“順平オレには連絡くれてないよ”

“え?マジですか?”

そんなヤツよなぁ~

まぁそんなヌケてるところがよさでもある

初めて会った時に感じた好印象だった空気感

いまや“僕は空気感です”とか宣ってる順平だからこそ

僕を含めた色々な人から

溢れんばかりの祝福が降り注ぎ

順平自身もBAR O-MIも訪れるお客さんも楽しい気持ちになれるんだろう

夢を叶えた20歳も年下の友達と立場は同じになった

いや!結婚したぶん最早人生においては先輩ですな

ただあくまでここはスタート地点のはず

これからが大変だろうが頑張って欲しい…

.

・・・・・・・

とか!どの口がゆーとんねん!!

10年以上やりながら未だに綱渡り状態のアラフィフが偉そうに!!

人の心配してる場合ちゃうっちゅーねん

お前が頑張れ

と、そんな残念なアラフィフすどーさんのお店BAR CLAYMOONは

なんと今週末16日で11周年でございます

どうにかこうにかおかげさまで11年

一緒に祝って頂けましたら幸いかと

アラフィフ店主は喜びます

それでは皆様師走は何かと忙しいかとは思いますが

BAR CLAYMOON12年目もよろしくお願い致します

.

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2022 12 12 am11:24

須藤 利浩

2022夏雑感

2022の夏はなんといっても早かった

いつのまにか梅雨はあけ6月というのに連日体温を超える気温

広島旅行を控えていた僕はその暑さゆえ

“アキレス腱を守る”という

大凡誰にも理解されないであろうこだわりを捨てた

どうでもいい事ではあるが

四半世紀もの間続けた事実故に

どうでもいいくらいにどうでもよくはない

一部の人に指摘される程度に外見が変わっただけで中身は何も変わらない

地球と僕の心は何の関連もなくただ周り続け時間は流れる

そして春に芽生えた心の中の優しい原動力だった“ハジマリ”は

いつしか暴走を始め自己嫌悪が加速する

 

8月半ばのある朝

店で目覚めた僕の右手は死んでいた

軽いしびれを感じるのみで自分の意思通りに動かない

こんなときに酒なんぞ呑んでいられないと恐怖を覚え店を休む

10年以上病院というものに行った事がなかった僕は

どこの病院に行っていいかもどうやって行ったらいいかもわからない

それでもどうにか文明の利器を駆使して
(ナメンなよそれぐらいは俺でもできるぜ!)

病院に駆け込んだ

 

“橈骨神経性麻痺ですね”

なんだそれ・・・

医者が言うには右手を圧迫した事による一時的な麻痺らしい

どれくらいで治るのか聞いてみると

一般的には一週間もあれば完治するのでニ週間分の薬をだしてくれるとの事

脳からきてるモノではなく時間が解決すると聞き

安心したのが結果的に早かった

その日から始まった僕の不便極まりない左手生活は存外長引く事となる

 

まず直面した問題は飯

左手で箸なんぞ使った事がないので如何せん物を挟めない

それから文字

左手で書いたそれらは何を書いてるのか自分でも読めない

仕事に関しては随分前に“左手でもできた方が格好いいよね”って事で

なんちゃってで練習した事はあった

思ったより下手くそになっていたのは想定内だったが

右手が固定できないのでまともに氷が割れない

このご時世のせいにはしたくないが

暇営業に終始してるにも関わらず
(根本は自分の能力不足なのは理解している)

疲労感が尋常ではなく無駄にストレスは積み重なる

それでもどうにか一週間かけて少しずつ左手の感覚を上達させていく

できなかった事ができるようになるというのは

自分の引き出しが増えるようで楽しくはある

ただ最も望んでいる筈の右手に回復の兆しがみえない

毎日のように眠った時に治った夢をみる

起きて現実に動かない右手に絶望する

焦りと絶望

そんな生産性のないように思えた事を繰り返し

ニ週間が過ぎた頃に僕は諦めた

“これはこれで受け入れよう”

 

物事というのは得てして絶望の中に光があり

受け入れた先に次がある

なんと諦めた翌日にやっと明らかな良化の兆しがみえた

これならもうすぐと思ってからは

今日は少し動く、今日はあまり動かない

今日は随分調子がいい、今日はいまいち調子が悪い

ゆるやかに上昇しながら波のある日々を送りつつ

神経が繋がりさえすれば動くのなら

ある日寝て起きたその時に治っていると思い描いた幻想は

少しずつ回復へと向かい少しずつ良くなり少しずつしか良くならないという事実にすり替わった

 

夏が終わり秋が来る

ただ一番嫌いな季節がいって一番好きな季節が来るだけの事

それが時の流れ

もうほぼ日常生活に支障をきたすことはない

それでも僕の右手はまだ完治していない

それでも僕の右手はやがて完治するだろう

それもまた日常のそして季節の流れ

 

2022夏

激動だった

少なくとも僕にとっては

そしてハジマリはオワルのだろう

色々な事があって色々な事を考えた

具体的にはうまく言えないけれど

僕の中のリアルがより濃くなったような気がしている

それは周りを薄く曖昧にする事だと気づく・・・

 

2022 9 28 am 8:12

須藤 利浩

 

 

 

ジュンジュンタッケテ~

〈空白〉

1.書類などの書き込むべきところに、何も書いてないこと。また、その部分。

2.継続しているものの一部分が欠けていること。何も存在しないこと。また、そのさま。ブランク。

 

数十年前から僕の記憶に時折混ざる空白
(勿論2の方ね)

原因ははっきりしている

そう酒だ

年齢と共に多少はマシになるかと思いきや

むしろ悪化してるのがタチが悪い

記憶の空白を時折繰り返しおおよそ三カ月に一度やらかす出来事

携帯電話の紛失・・・

 

その日は早朝ラッシュ前に電車に乗った事はうっすらと覚えている

“お客さん、終点ですよ”

という声で目覚めたのはJR吹田駅

記憶の中に数時間の空白が混ざっている

それでもまあ割と近場で助かったと思いポケットを探って感じた違和感の正体

“携帯がない・・・”

自分のバカさにげんなりしつつ

初めてではないのでやるべき事はわかっている

すぐに駅員さんに聞いたところでまだ届いていないだろう

一旦帰って立て直そう
(何をや?)

懲りる事無く乗りすごしを繰り返しどうにか辿り着いた最寄のJR塚口駅

少し時間がたったので念の為に改札で聞いてみるが

いまのところ忘れ物としては届いていないとの事

 

充分とは言えない睡眠をとり出勤しながら少しまともになった頭で考える

ポイントは二つ

 

・数時間たったし今なら届いてるかもしれない
・もしかしたら電車以外の所かもしれない

 

まずは新大阪駅にて駅員さんに尋ねてみる

“ここに連絡してください”

渡された小さなメモ用紙には忘れ物センターの情報が

連絡したいけど電話がないっちゅーねん!塚口駅はもっと優しかったぞ!

心の中でツッコミ前日の曖昧な記憶を元に

駅前のフードコート、前日に寄った(酔った)ところで聞いてみるも手掛かりらしきものはない

じっちゃんの名にかけてこの謎は・・・

ふざけている場合ではない

少しばかりの焦りと不安に包まれそうになった時に閃いた

今、何時半だ?

19:00過ぎならまだギリギリ間に合う筈だ

大急ぎでBAR“H”へと駆け込んだ
(時期が時期だけに20:00閉店)

“ジュンジュンタッケテ~”

“またですか?”

 

そう、携帯をなくす度にBAR“H”へと駆け込みJに携帯を借りているのだ

助けてと言っただけで全てを理解し

またですか?と返してくれるJはインテリジェンスレベルを上げたようだ

最近はすっかり呑み誘いにのってくれなくなり

Aさん曰く

“J最近彼女できたから調子こいてる”

という事らしいが

“今回はどこにかけたらいいんですか?”

閉店間際に押し掛けたメモを差し出す20歳も年上な僕に

Jは苦笑いをうかべながらも表情も声もいつも通り優しい

忘れ物センターに連絡してくれた後、携帯を預けてくれる

呑みの誘いを断ろうが、彼女ができようが、調子こいてようが

根っこは優しいままのJでよかったよ

僕は嬉しいよ
(俺マジで何様やねん)

携帯の特徴を伝える僕と電話の向こうで確認してくれるセンターのおねいさん

同じ機種!同じカバー!!待ち受けはじゃりん子チエの小鉄!!!

それは限りなく100%僕の携帯に間違いない筈だぁ!!

 

安堵した僕に半ば呆れたように笑いながらJが言う

“須藤さんこれ何回目でしたっけ?”

前回は高知一人旅の前日

飛行機、ホテル、全てのやり取りを携帯で行った為

データの全てが詰まった携帯をなくし

明日の旅行は終わったと途方にくれながらダメ元でドコモショップに行くと

行った事もなければ聞いた事もない“鴻池新田駅”から電波がでてるという

当時ランチをしていたBAR“H”に駆け込んで

鴻池新田駅の電話番号を調べて貰い、電話をかけて貰い

新大阪から鴻池新田駅までの行き方も調べてくれた

あの日のJも優しかった

3回目かなぁ~

という僕に

こんなんもありましたねぇ~

というJに聞いた忘れていたエピソードを思い出し少なくとも4回はあった事が判明

ポンコツですやん・・・

 

次の日に携帯を受け取りに行き事なきを得ました

三か月に一回はさすがにやりすぎとは思いますし

よく首から携帯ぶら下げたらと言われますが

僕みたいなもんはインテリジェンスとダンディズムしかないとされてるので?!

それもどうかいなと
(インテリジェンスもダンディズムも関係ないけど)

 

我ながら思う

反省もできないのはアホでしょ

同じ失敗を繰り返すのはバカでしょ

わかってる、わかってはいるけど

お酒が好き過ぎるのですよ

酔っぱけちまうんですよ

 

困ったこっちゃと思いつつ

それでも近い将来に僕はまた

記憶に空白が混ざり込んで

絶望と共にBAR“H”に駆け込む事になるでしょう

そして反省もなく繰り返す

 

“ジュンジュンタッケテ~”

“またですか?”

 

いつも通りの優しいJの顔が浮かぶ

 

2021 9 3 20:57

須藤 利浩

 

なし崩しの朝に喝采を

もうあと数時間で2018が終わる

7周年も無事に終わり

なんだかんだいっても“今年も終わりかあ”と一息つけるのはよかったとも言える訳で

そして毎年言ってる気がするがやはり今年も“いい年だったなあ”と胸を張れない自分がいる訳で

まずは何といっても圧倒的に変化に乏しかったなと

そして切実なハナシとしては

相変わらずの酒好きにもかかわらず認めざるを得ないくらい酒に弱くなり過ぎている…

この年末も我ながらひどかった

振り返る事も大事かと思いますが自己嫌悪しかないのなら

“振り向くな後ろに夢はない”

ってアマエでしかないな

以前にも書いた気がするのですが

自分の仕事的にお客様に来ていただいてはじめて成り立つ以上

お客様に迷惑かけるのだけは避けたいのですが

いやはや…

 

とりあえずご迷惑をお掛けした皆様、どうもすみませんでした

 

つい最近、昔のドラマを見る機会があり

“とんぼ”の長渕が貫録ありすぎて懐かしく見ていたのですが

設定がまさかの32歳!!ひとまわり下!!

そろそろ格好良く呑みたいなぁ

などとポンコツな願いが脳裏に去来したりする訳だ

ただそういうものは無意識にできるから格好いいんであって

意識してるうちは楽しくなさそうかなと

毎度ではないにせよ楽しくなりたくて呑んでて楽しくなれないなら本末転倒ってヤツですな

これまた毎度ではありませんが

なし崩しにボロボロに酔い迎える朝もたまにはいいでしょう

2019はそんな朝(昼?)はもう少し控えようと思っておりますが

また皆様にご迷惑をお掛けする事もあるかとは思いますが

ごくごくたまに

なし崩しの朝に喝采しながら呑んだくれましょう

2019もBAR CLAYMOONとよろしくお付き合いくだされば幸いです

それでは皆様よいお年を♪

 

2018 12 31 22:31

須藤利浩

2017最西端へ行け?!

12月最初の週末

金曜日は14:00まで呑んでいたらしい(記憶が曖昧)

出来うる事なら今日は早く帰りたい

と言う気持ちを隠しながらの最悪な体調とテンションで土曜日は始まった

こういう時に限って延長戦になるのが世の常というもの

とはいえ昨日は昨日の狂った人、今日は今日の狂気な人

昨日は昨日の阿呆テンション、今日は今日の馬鹿テンション

上がりきったテンションで“呑むな”という方がどうかしてるぜ

ご機嫌臨時収入を懐に男3人24時間営業の居酒屋に飛び込んだ

ビールから日本酒に変わり4合程も飲んだ頃

時計の針は11:00を回っていた

そこで素敵に閃いた

“新大阪駅のフレンチおでんとやらでワイン呑もうぜ”

馬鹿な3人に反対もしくは不参加という選択肢はない

グラスワインからボトルワインに変わり2本目を開けた頃

謎ドッキリでJが泣き、隣の中年カップルの女に逆ナンされ

笑い転げながら焼き鳥屋に場所を移す

後にAさんに見せて貰った写メの中で僕は中々ご機嫌なポーズをとっていたが

その後の記憶がキレイさっぱりなくなっていた…

 

気がつくと電車に乗って新大阪に向かっていた

さあ仕事だ

新大阪に着いて携帯電話がない事に気づく

今何時だ?

駅の時計を見るとまだ17:00前、出勤にはちと早過ぎる

ん???????????????

俺家に帰ったっけ?

いや、これは昨日と同じ服だ

まぁ~たやっちまった!!

ネットカフェのシャワーを経て出勤するや昨日の焼き鳥屋に連絡するも携帯はない

絶望を意識しつつ駅の忘れ物センターに問い合せてみる

“ウオ○○駅に届いてます”

“ウオザキ駅ですね。明日取りに行きますので”

よかったぁ~一安心♪

どうでもいい事だが僕の2017最西端は12月のこの日まで甲子園球場だったのだ

いくらなんでも狭すぎる

明日2017の行動範囲が少し広がる事になる(あんま変わらんけど)

 

翌日新大阪駅から電車に乗り大阪駅手前でウオザキ駅は芦屋で乗り換えやな

と何気なく確認しようとした僕は驚愕した

JRにウオザキ駅は存在しない…

大阪で慌てて降りて忘れ物センターへ問い合せて更に驚愕

“ウオズミ駅にありますね”

ぬな!ウオズミ?どこだ?

“ウオズミは明石の向こうで加古川の手前ですね。新快速で明石まで行ってそこから…”

とお!!てか遠!!

かくして非常~に萎えながらウオズミまで行って

せっかくやから明石にて明石ビールに明石焼きを食って帰ってきましたとさ

てか結局この日も昼から呑んでるやん

 

12月BAR CLAYMOON 6周年に来て頂いた皆様本当にありがとうございました

年末までは休まず頑張ろうとゴールが見えていたので頑張りやすかった事もあって

12月は中々いいカタチで終わる事ができました

2017は昨日で仕事納め久しぶりの休日に唯々テンションがご機嫌です

今年もいい年だったと言い切れない反省の多い年でした

2017僕行動範囲 東→京都 西→明石 南→奈良 北→京都 ・・・狭すぎる

色々と思う処はありますが2018は上記の範囲を広げる事と

きちんと休日を作ることを目標と言うより大前提として

楽しい年にしようと思います

予感がする!!

2018はご機嫌になりそうな予感がする!!!

 

2017はお世話になりました本当にありがとうございます

2018もよろしくお願いします

それでは皆さんよいお年を♪

ベリー ベリー ストロング!! つながってる誰かと
ベリー ベリー ストロング!! いつ どこで 会う?

 

2017 12 31 15:31

須藤 利浩

 

12月~BAR CLAYMOON 6周年~

年々曖昧になりつつある“秋”を曖昧に感じつつ

上着を1枚2枚と重ねながら凍えるような寒さによって強制的に冬を感じさせられる

季節に関係なく流れる時間

日々の残骸は週の残骸、月の残骸を経て

始まりは終わりへ向かいながら終わりは始まりを迎え2017は残骸と化すのか

いつ頃からか感じる12月の街のせわしさに

時の流れが早まったかのような錯覚を覚える

焦り、憤り、悔い…

あらゆる後ろ向きな感情は虚構であり所詮は錯覚

錯覚のような認めたくもない結果のみがリアル

時間軸に沿って並べられた事実は脳内で交錯しながら迷いが迷いを呼び

錯覚がリアルに成り代わる…

 

先日来てくれた知り合って数年のお客さんというよりは最早友達が言った

“すっさん心のセッションをいかにするかやで”

“本気で相手と心をぶつけ合って相手の脳を借りるねん”

なるほどそれで自分の人間力を上げるのか

だから彼は魅力的なのか

久しぶりに心に響いた言葉

 

先日来てくれた僕よりもずっと仕事ができる後輩が言った

“難しい事を教えても無理なら「明るく楽しく元気よく」まずはこの3つを徹底しますわ”

“これから12月、大変そうやからこそワクワクしないもんですかねぇ?”

当たり前である筈の考え方とマイナス思考への本気の疑問

だからこいつはイキイキしてるのか

ずっと忘れてた前向きな気持ち

 

言葉、考え方、気持ち…

実体のないものは全て虚構が生み出す錯覚なのか

否、言葉が錯覚なら言霊などという概念は生まれ得ない

考え方が行動を支配するが故にリアルへとつながり

気持ちによって生きもすれば死にもする

全ては己の信念なのだ

 

12月にしてやっとご機嫌モードになってきたぜぇ

今週末はBAR CLAYMOON 6周年でございます

本当に皆様のおかげでどうにかこうにか6年やって来れました

ありきたりですが長かったような短かったような

とはいえまだまだ志半ばこれからも続けて行けるように頑張る訳ですが

とにかく年末前のクリスマス前のほんのひと時を

楽しく呑んで頂けたらめっちゃ嬉しいなぁと思いつつ

お祝いに来てくれたら更に嬉しいなぁと思いつつ

俺はもうちょいやれる筈やと思いつつ

こんなカツカツの生活をするために店やってるんちゃうねんと思いつつ

彼女もつくらず家庭ももたずなんで休みなしにやっとんじゃいとか思いつつ

来年こそはカープ日本一やぁとか思いつつ

有馬記念はどの馬が…

いかんいかん愚痴やら願望やら煩悩が混ざり過ぎとるやないか!!

 

12月も1/3以上過ぎました

上記2人の友達は勿論の事

この数ヶ月休みをとれず結果的に内にこもり気味になってしまいましたが

先月から今月にかけてお祝い事が多く

外で呑む機会が増え色々な人と話す機会があり

中々にご機嫌なモードになりました

やっぱ外呑みはいいですね

このご機嫌モードは通常モードにしちまおう

どう考えてもその方が楽しいでしょ

 

年末は今年も30日までは休みなく営業するつもりです

クリスマス近辺に急に休んだ時はそっと静かに察して下さい?!

それでは改めて皆様方も暮れの忙しい時期になりますが

BAR CLAYMOON 6周年そして7年目もよろしくお願い致します

今日も明日も明後日も年末年始もずっとえみふる♪

 

 

2017 12 12 am11:38

須藤 利浩

 

 

 

 

 

 

 

5YEARS

つい先日皆様のおかげをもちましてBAR CLAYMOONは5周年を迎える事ができました

お店というのはお客様に来て頂いて成り立つ訳で

本当に“おかげさま”としか言い様がなく感謝しかありません

5年というちょっとした区切りなので

少しだけ時計の針を巻き戻させて頂きます

 

おおよそ20年前

溢れかえるほどの“根拠のない自信”以外に何も持っていなかった自分は暇さえあれば呑んでいた訳ですが

よく親友と呼べるツレに

“お前は安定を欲しがってるだけや”
“お前は野良犬のくせに飼い犬になろうとするからバランスが悪いねん”

などと若さ故の中々に恥ずかしい会話の中で言われ続けよく反発していました

そんなある日の1本の電話で今日に至るまで僕の人生から“安定”と“安らぎ”いうものが抜け落ちた…

 

飲食業

我が事ながら最初は舐めてたかなぁと思います

後悔っていう感情は一切ありません

“もしも”なんて酔狂な世界は存在し得ない以上

判断できない事を判断しようとする事に意味を感じれないですし

後悔しても始まらないというよりは後悔のしようもないなと

同様に良かったか悪かったか?

という事にも判断基準をつくれないので

良かったと思いたい

にしないといけないなとしか思えません

 

5年半前の自分には選択肢がなかった

自分なりに1番大事にしてきたのは“自尊心”

前の職場でもうこれ以上ここでは働けないと思った時点で

次の展開を考える前に“辞めます”と

熟考というよりは完全に勢いに近かったが自尊心がそうさせた

最初に声をかけてくれた恩人、お世話になった社長、一緒に働いたスタッフ

特に自分がいなければここにいる意味がないと一緒に辞めた後輩と

辞める事によって出会えた後輩との出会いは自分の中で救いとなった
(結局財産は人ですね)

厳しいことはわかっていた苦労するであろう事もわかっていたが

自分に残された道は独立しかなかった

 

あれから5年半独立して5年

5年もやれるとは思わなかったとは言いません
(それならハナっからやってないしね)

けど…

やっぱキツかったぁ!!!

何回も心へし折れそうになったもんなぁ~

本当に数々の困難がありましたが

その都度乗り越えて来たとは言えませんが

先にも書いた通り

お客様に来て頂いて成り立つ業種ですから

毎回毎回何度も何度も

色々な人に助けて貰いながらの5年間でした

繰り返しになりますが

皆さん本当にありがとうございました

そしてこれからもよろしくお願いします

 

さてBAR CLAYMOONは昨日で2016の仕事おさめとなりました

今年最後のお客様の会話で“今年の漢字”と聞いて考えていました

最初に浮かんだのは“無”

これでは悲しすぎると考えた末に浮かんだのが“こい”

やっぱこれやな何回も泣かされたもんなぁ~

勿論“鯉”の方ですよ

 

2017はそろそろ“安定”が欲しいなぁ

などと今更そんなヌルい事は言いませんが

数十年感じた事がない“安らぎ”が欲しいぜってヌル!!

まぁ少しだけヌルい感情を隠し持ちつつ来年もカープの優勝を願いつつ

キクばりに“上を向いて、前を向いて。明るく元気に”を常にこころがけ

誠也の如く神っていきましょう

それでは皆さんよいお年を

ベリーベリーストロング!!ご機嫌に!!

 

2016 12 31 17:12PM

須藤 利浩 

 

 

幸せのキセキ~アナザーストーリー~

これもまた4年と少し前からのオハナシ

4年半前のGW頃にある知り合いが近所のお店“イタパン”の噂のマスターのりちゃんを連れて来てくれた

噂通り喜怒哀楽の激しそうな娘

“楽しそうに呑むなあ”

というのが最初の印象だった

自分はそういう人間とは概ね仲良くなるのですが

のりちゃんも例外ではなく早々に仲良くさせて貰うようになった

 

“須藤さん聞いて!好きな人が出来てん!”

いつも通りご機嫌に呑んでいたのりちゃんが急に言った

ほう、よろしいこっちゃ

僕に聞かない理由はない

“ケンシくんっていうねん。格好いいねんけどなぁ、そんなんとちゃうねんめっちゃいい人やねん”

めっちゃいい人?

さてどんなエピソードがでるやらと構えた僕にのりちゃんが聞かせた話はこうだ

明日が早いけど起きれるか不安というのりちゃんにケンシくんは

“俺も明日早いから電話して起こしてあげるよ”

と言ってくれたそうだ

安心して寝たのりちゃんは残念ながら寝坊&遅刻となった

携帯は鳴らなかったのだ

その夜、“ごめんな、俺も寝坊してもて電話できんかってん”

ケンシくんからお詫びの連絡

“な!!めっちゃいい人やろ!?”

いやいやのりちゃんそれ普通やで…

ていうか電話できてない時点で普通よりちょい下ちゃうの?

ほどなくのりちゃんが連れて呑みに来てくれたケンシくんは

控えめでマイペースなタイプだった

のりちゃんとは絶妙なバランスという事なのだろう

 

惜しまれながらもイタパンはなくなり“駱駝”と名を変えた店舗もなくなった時

のりちゃんはなかなかにハードなトラブルに見舞われた

西中島近辺では色々な噂話が飛び交ったが

久しぶりに顔を見せてくれたのりちゃんは言った

“知らん人にまで好き勝手言われて本当に口惜しい。須藤さんには全部話すからそんな人らとしょうもない話はせんといて欲しい”

信用が嬉しかった

その一件以来更に仲良くなったのりちゃんは未だに僕の周年と誕生日

年末年始の残念なほどタイトな両日をスーパーな笑顔で訪ねてくれる友達となった

 

ある日パジャマのような格好で全くシラフで来たのりちゃんはいきなり言った

“須藤さんネットカフェの行き方教えて”

頭の中に“?”しか浮かばない僕に

“もう終わりやから別れる。決めてしまったから感情が穏やか過ぎて怒る事もないけど今日は帰りたくないからネットカフェ行ってみるわ”

請われた僕はネットカフェの説明はしつつ

“色々あるやろうけど冷静に考えてみたら”と説得を試みた

“もういいから。今までも色々あったけど今回はホンマに終わりやねん”

と言い張るのりちゃんを見送りながら何度見ても大好きな2人が別れるのをみるのはあまり気分がいいもんじゃないな

と少し切ない気持ちになった…

数日後に会ったのりちゃんは“ネットカフェ話”を笑い飛ばしながら仲良くケンシくんと呑んでいた

呆気にとられながらもホッとした僕はその後数回(1回2回じゃないですよ!!)持ち上がる別れ話を毎度馬鹿々々しく思い笑いながら聞く事になる

 

そろそろとこちらが思う事なくのりちゃんがそろそろと言い出したのはそれから1年ぐらいか

理想のセリフ、理想のシチュエーション、理想のプロポーズ…

聞かされる度に泣き、笑い、ケンシくんの困った顔

喜怒哀楽を炸裂させながら1歩1歩進みつつ

禁煙を決意してまで“勝負”と位置付けた?鹿児島のケンシくんの両親への“ご挨拶旅行”もまた

行く前は散々泣いたり怒ったりしていたのが帰ってきて

“須藤さん聞いて”な話は笑顔しかなかった

 

“ドレス着るからダイエットするねん”

ある日ダイエット宣言をしながら数杯目のビールを呑み干したのりちゃんは

いつもと変わらないペースで

“須藤さんおかわり”とビールを注文した

更に“お腹すいたなぁ~カツ丼食べたい!!”と

おおよそダイエットには似つかわしくない単語がとびだした

迎えに来たケンシくんに

“カツ丼食べたいけど食べていい?”と甘え

“カツ丼♪カツ丼♪”と嬉しそうに連呼しながら

ケンシくんに手をひかれご機嫌に帰るのりちゃんは酔いはするが昔ほど酩酊しなくなった

手を引きながら諦めたような苦笑いを浮かべたケンシくんは優しい顔をした

お互いを思いやる2人だけの世界

2人にしかわからない世界

いい関係だねと心の中で呟いた僕はホッこりとした心地がした
(ダイエットは無理やな…)

 

先月そんなのりちゃんらしく辿り着いた幸せのお披露目となる結婚式に呼んで貰った

“馬子にも衣装”とはよく言ったもので!?

のりちゃんのドレス姿はなかなかに様になっていた

ヴァージンロードを歩きながら必要以上に色々な人の視線に目で応えている

のりちゃんと並び少し緊張気味に見えたケンシくんは

神父さんの“・・・な時も・・・な時も・・・・・・愛を誓いますか?”

と問われ

“はい!誓います!!”

と大声でまさに愛を叫んだ

会場には失笑にも近い笑いと意外性に驚く笑い、微笑ましさ故の温かい笑いにケンシくんの照れ笑い…

色々な笑いが溢れ交錯する中で

厳かに“誓います”といったのりちゃん

普段のキャラと真逆の2人のコントラストに

会場は幸せな空気に包まれた

 

その後爆音でのハイスタのステイゴールドでためにためてバズーカを持って皆の前に登場し

1歩前でしゃがんで呼吸を合わせたケンシくんの優しさと紙吹雪を

歓喜に沸く参列者に炸裂させた

花びらのシャワーを浴びながら

全身から迸る幸せを見せつける2人

何もかもがのりちゃんらしい素敵な式で

いつも通り弾けるように笑うのりちゃんは

傍らの見たこともないほどに感情をさらけ出し幸せそうなケンシくんと会場にいる全ての人を

のりちゃん色に染めた

 

これが先月僕が見たもう1つの大好きな2人の最高の幸せの軌跡

 

結婚式

大好きな人が幸せになる様、大好きな人の最高の瞬間

何度呼んでもらってもいつもいいもんだ

そんな幸せの坩堝幸せの連鎖の中にいる感覚は独りの実感

羨ましくは感じない

次は自分がとも思わない

幸せになりたくない訳じゃない

が…

トランキーロ!!

あっっっせんなよ!!

幸せが俺を追いかけろ!!!

 

2016 8 12 7:54

須藤 利浩

 

幸せのキセキ

4年以上も前からのオハナシ

そろそろ終わりかなと思った朝方に開いたお店の扉

“あっ”

思わず口をついて出た言葉は少しの驚きをはらみつつも良くも悪くもあまり感情のこもらないものだった

昨日も来てくれた近所のお店のマスターらしい若くてオシャレな彼に対して

僕は心の中でジャッジを下せずにいた

面白そうではあるが掴み所のない飄々した風貌は僕と合うようには思えなかった

彼から“好意”の様なものを感じる事も出来なかった

にも関わらず昨日に続いてのご来店

名刺交換をしながらのザックリとした自己紹介で

“ポンです”と言った彼との出会いはそんなありきたりで特別ではなかったと記憶している

 

その後、かなりの頻度で色々な人を連れて来てくれた

回数を重ねる毎にうっすらとした初対面の相手に対する感情の防御壁は崩れ去り

彼の人間性に触れるやすっかり彼の魅力に魅せられた

ある日淀川の河川敷にて朝っぱらから呑んでいた時の事

生い茂るクローバーを見ながら

“よつ葉のクローバーなんて幻や!そもそも幸せが幻やからな!?”

と訳の解らない事を言いながら酔っぱけていた僕に

“須藤さん!!”

と満面の笑みを浮かべ呼びかけたポンちゃんの手にはよつ葉のクローバーが!

1分とたたずに幻の幸せを探し出してきた

感心する僕は次の瞬間更に驚愕することになる

“好き、嫌い、好き、嫌い アカン嫌いやあ!!”

???!!??!?!!!

4枚でまさかの花占いならぬ草占い

幸せを見つけるセンス、瞬時にそれをベットする潔さ、それら全て笑い飛ばせる器の大きさ!!!

4年半前の春の衝撃

 

“ちょっといい娘がいるんですよ、エニーさんの知り合いなんですけど…”

他人の色恋にさして興味なんぞはないが

楽しそうな笑みを浮かべながら話すポンちゃんを見るに少し興味がわく

その見つけたものはただの暇つぶし的な興味なのか

些細な楽しみの種か未来の大いなる幸せの芽なのか

“スタイルがよくてノリがいいんですよ”

と聞いていた通りアサミちゃんは確かにスタイルは良かった

ノリも良かったというかノリに関してはスタイリッシュな外見からは意外なほど

もはや“大丈夫か”と思うほど良すぎた

今はなき朝の“しょんべん横丁”に呼ばれて来たアサミちゃんは疑いようがないOLだった

ここは朝のOLさんの来る場所ではない

またある時は

“今日はお腹が痛いので休ませてください”

と会社に電話し

“やっちゃった笑い”を浮かべるアサミちゃんの右手にはしっかりと酒の入ったグラスが握られていた

おいおい社会人失格ですよ

ノリの良さから色々と笑いを提供してくれた彼女ではあるが

何より僕を驚かせたのはアサミちゃんの“愛情に対しての真っ直ぐさ”だった

 

そもそも初めて会った時から分かり易くポンちゃんに対する愛情は見て取れた

周りに“好きさ”をアピールしている煩わしさは全くなくただ“好きさ”が溢れている

こういう正直な娘は好きだが

次々に幸せを見つけ新たな環境を創り出しアクティブに動くポンちゃんに

アサミちゃんの愛情はまっすぐ過ぎる気がした

事実、芳しくない話しをよく聞かされた

話は聞いてあげれるが僕はいつも自分のスタンスを明確にする

僕はポンちゃんの友達でありポンちゃんあってのアサミちゃんであり

ポンちゃんあってのアサミちゃんでしかない以上余計な協力はしない

ポンちゃんからは別れる旨の話を何度も聞いた

傍から見ていて2人の幸せは想像しがたく難しいように思えた

 

昔ある人が言っていた

人間には2種類ある

人生色々な事があり悲しくて泣く事もあるだろう

そしてやがて泣き止んだ時に強くなるのか、弱くなるのか

アサミちゃんはよく泣いていた

ポンちゃんの名誉の為に言っておくが

ポンちゃんが悪いと言うよりも些細な事でよくピーピー泣いていた訳ですが
(色々な人が色々な場所で色々な場面で目撃していた事でしょう)

その度に強くなっていったように見えた

泣きながらも必死に寄り添い離されないようについていく様は

健気ではじけるように美しかった

奇跡が起きそうな気がした

奇跡は起きようとしていた

2人の最高のカタチ

 

数年後朝方に1人でポンちゃんが呑みに来てくれた

“今日は喧嘩したから帰りたくないんですよ。須藤さん呑みに行きましょうよ”

十三にて久々の二人呑み

“今日も・・・で・・・で腹立ったから婚姻届破ったりましたわ”

ん?!

思ったより話は進んでるようだ

酒がみるみる胃袋に流し込まれていく

珍しく愚痴るポンちゃんの話を聞きながらも随分前から感じていた感情が時折顔を覗かせる

クールな彼があまり人に見せようとしないが隠せなくなっている

アサミちゃんへの愛情

 

10:00am過ぎまで呑みもうそろそろ帰ろうと店を出た

“須藤さん役所に行きたいから付き合ってくれません?”

なんとなく話はみえたが僕は基本的に性格が悪いので敢えて聞いてみる

“いいけど何しに行くん?”

“いや~破ってもーたから婚姻届貰いに行こうかな”

照れ笑いが素敵過ぎる

“また破るかもしらんから念のため6枚もらっとこ。後、離婚届も2枚やな”

でた!!相変わらずブッ飛んだポン発想!!

“須藤さんも貰っといたらいいですやん。何があるかわかんないっすよ”

確かにね

でもその何かは6枚全部破ってもた時にって事にしとくか

結局最後は笑顔やもんなとつられて笑顔になりながら帰ったその日の数日後

最高の笑顔で2人婚姻届を見せるその姿をFBで見たのだった

 

そして先日結婚式に呼んで貰った僕は

舞い上がる風船を眺め

テキーラでの乾杯という未だかつて体験したことのない乾杯をしながら

“昔知り合いの結婚式で全員でテキーラで乾杯ってした事あるわ”

と誰かに一生話し続けるんやろうなぁと思いつつ

この2人といると常に笑顔になるよなぁと

溢れる笑顔と未来の素敵な思い出話を貰いながら

ご機嫌すぎる2人の姿を見てなんとも言えず幸せな気持ちになった

 

これが4年半前から僕が見てきた大好きな2人の最高の幸せの軌跡

 

2016 8 4 7:48

須藤 利浩