親愛なるJに降り注ぐ溢れんばかりの祝福を

あれ?俺にはきてないぞ… 

.

7年ぐらい前の朝方

久しぶりにエニシと話したくなりBAR レインボーの扉を開いた

“終わりかけ”という空気に包まれた店のカウンター内には見慣れない顔が

ほんの刹那頭に浮かんだ?マークは

最近聞いていた話を思い出しすぐに納得へと変わる

“あぁこの子か…“

エニーのとこの順平がこ~で、順平があ~で

と、概ねよろしげな噂で聞いていた通り

なんとなく感じのいい空気感と丸出しにした素人感

嫌いではない

それでも初対面で長々と延長戦に付き合わせるほど僕は厚顔無恥でもない

ある程度のお金を使い早々に切り上げようと

“ブラントンをストレートで2杯とギネス2杯ちょうだい”

“え?”

そらそーだ

まだ慣れていない彼にしてみれば一人客のファーストオーダーとはとても思えまい

ブラントン2杯は俺の1杯と君の1杯

ギネス2杯は俺のチェイサーと君のチェイサー

なるべく解りやすく説明した後

少し話した内容は今では覚えていない

.

数日後、今度は彼が吞みに来てくれた

他愛ない話をしたのだろう

何を話したのかは覚えていないが

その時に感じた事は覚えている

“コイツいいヤツだ”

それから頻繁にお酒にまつわる色々な事を聞きに来るようになり

順平くんと呼んでいた僕の呼び方から敬称がとれ

順平と呼ぶようになるのに大して時間はかからなかった

そんな順平は会った当初から

将来は独立して自分の店をもちたいと言っていた

.

ほどなく順平はBAR ヘブンスを任され店長となった

店どうしの付き合いだけでなく歳下の友達として

よく一緒にに吞みに行くようになってそれなりの月日が流れた

色々な事があった

仕事終わりの天満呑み、木津市場のうなぎ

休みやから昼から吞んだくれようと誘ってきながらなんのプランもない神戸呑み
(結局俺が順平カップルの接待しただけやん)

アラさんと3人で涙の新大阪駅呑み

数え切れんぐらいの”呑み”だけじゃなく

ポンコツな僕が携帯電話を失くすたびにヘブンスへ駆け込み助けて貰い…

ただ独立したいと言いながら

色々と話してくれるが話にリアリティーがない

全くもって具体的に動いている様子もない

十数軒の店で働き37歳まで怖くて独立できなかった僕には何も言う資格はない

というより僕がどうこういう話ではない

独立する事が偉いわけでもなく

色々な働き方や色々な道があるだろう

そして順平はたぶん独立はしないのだろう…

.

新型コロナウイルスが世間を賑わせ

働き方に制限がかかり

色々な人が色々な事を考えそれぞれの正義の元に色々な働き方を余儀なくされて数年

どっちが先だったかは定かではないが

順平から結婚と独立の報告があった

ヘブンスをやめる時期を決めて退路を断った順平の話には

リアリティーが伴いバラバラに見えた事柄が具現化していく

そしてとうとう

じいちゃんのやっていた散髪屋から名前を貰ってBAR オーミにします

11月にオープンできそうです

という報告をしに来てくれた

順平の数年来の夢が叶う

唯々嬉しくもあるが何よりも尊敬の念が強かった

正式にオープンの日が決まったら教えてくれ

と話してからしばらくして…

.

ある噂話が耳に入ってきた

“順平11月1日の1並びでオープンするらしいですよ”

あれ?俺は聞いてないぞ

あの人もこの人も開店お知らせラインがきてるらしい

人数制限?

とりあえず初日は避けといた方が無難かなと

3日目に行く事にしたのだが

思ったより早かったのでプレゼントが間に合わない

とりあえず密かに買い溜めていた秘蔵コレクションの酒を1本持って行く事にした

.

“順平おめでとう”

“ありがとうございます。でも須藤さんは初日に来てくれると思って待ってました”

おいおいおい!おーまーえー!!

“順平オレには連絡くれてないよ”

“え?マジですか?”

そんなヤツよなぁ~

まぁそんなヌケてるところがよさでもある

初めて会った時に感じた好印象だった空気感

いまや“僕は空気感です”とか宣ってる順平だからこそ

僕を含めた色々な人から

溢れんばかりの祝福が降り注ぎ

順平自身もBAR O-MIも訪れるお客さんも楽しい気持ちになれるんだろう

夢を叶えた20歳も年下の友達と立場は同じになった

いや!結婚したぶん最早人生においては先輩ですな

ただあくまでここはスタート地点のはず

これからが大変だろうが頑張って欲しい…

.

・・・・・・・

とか!どの口がゆーとんねん!!

10年以上やりながら未だに綱渡り状態のアラフィフが偉そうに!!

人の心配してる場合ちゃうっちゅーねん

お前が頑張れ

と、そんな残念なアラフィフすどーさんのお店BAR CLAYMOONは

なんと今週末16日で11周年でございます

どうにかこうにかおかげさまで11年

一緒に祝って頂けましたら幸いかと

アラフィフ店主は喜びます

それでは皆様師走は何かと忙しいかとは思いますが

BAR CLAYMOON12年目もよろしくお願い致します

.

.

2022 12 12 am11:24

須藤 利浩