幸せのキセキ~アナザーストーリー~

これもまた4年と少し前からのオハナシ

4年半前のGW頃にある知り合いが近所のお店“イタパン”の噂のマスターのりちゃんを連れて来てくれた

噂通り喜怒哀楽の激しそうな娘

“楽しそうに呑むなあ”

というのが最初の印象だった

自分はそういう人間とは概ね仲良くなるのですが

のりちゃんも例外ではなく早々に仲良くさせて貰うようになった

 

“須藤さん聞いて!好きな人が出来てん!”

いつも通りご機嫌に呑んでいたのりちゃんが急に言った

ほう、よろしいこっちゃ

僕に聞かない理由はない

“ケンシくんっていうねん。格好いいねんけどなぁ、そんなんとちゃうねんめっちゃいい人やねん”

めっちゃいい人?

さてどんなエピソードがでるやらと構えた僕にのりちゃんが聞かせた話はこうだ

明日が早いけど起きれるか不安というのりちゃんにケンシくんは

“俺も明日早いから電話して起こしてあげるよ”

と言ってくれたそうだ

安心して寝たのりちゃんは残念ながら寝坊&遅刻となった

携帯は鳴らなかったのだ

その夜、“ごめんな、俺も寝坊してもて電話できんかってん”

ケンシくんからお詫びの連絡

“な!!めっちゃいい人やろ!?”

いやいやのりちゃんそれ普通やで…

ていうか電話できてない時点で普通よりちょい下ちゃうの?

ほどなくのりちゃんが連れて呑みに来てくれたケンシくんは

控えめでマイペースなタイプだった

のりちゃんとは絶妙なバランスという事なのだろう

 

惜しまれながらもイタパンはなくなり“駱駝”と名を変えた店舗もなくなった時

のりちゃんはなかなかにハードなトラブルに見舞われた

西中島近辺では色々な噂話が飛び交ったが

久しぶりに顔を見せてくれたのりちゃんは言った

“知らん人にまで好き勝手言われて本当に口惜しい。須藤さんには全部話すからそんな人らとしょうもない話はせんといて欲しい”

信用が嬉しかった

その一件以来更に仲良くなったのりちゃんは未だに僕の周年と誕生日

年末年始の残念なほどタイトな両日をスーパーな笑顔で訪ねてくれる友達となった

 

ある日パジャマのような格好で全くシラフで来たのりちゃんはいきなり言った

“須藤さんネットカフェの行き方教えて”

頭の中に“?”しか浮かばない僕に

“もう終わりやから別れる。決めてしまったから感情が穏やか過ぎて怒る事もないけど今日は帰りたくないからネットカフェ行ってみるわ”

請われた僕はネットカフェの説明はしつつ

“色々あるやろうけど冷静に考えてみたら”と説得を試みた

“もういいから。今までも色々あったけど今回はホンマに終わりやねん”

と言い張るのりちゃんを見送りながら何度見ても大好きな2人が別れるのをみるのはあまり気分がいいもんじゃないな

と少し切ない気持ちになった…

数日後に会ったのりちゃんは“ネットカフェ話”を笑い飛ばしながら仲良くケンシくんと呑んでいた

呆気にとられながらもホッとした僕はその後数回(1回2回じゃないですよ!!)持ち上がる別れ話を毎度馬鹿々々しく思い笑いながら聞く事になる

 

そろそろとこちらが思う事なくのりちゃんがそろそろと言い出したのはそれから1年ぐらいか

理想のセリフ、理想のシチュエーション、理想のプロポーズ…

聞かされる度に泣き、笑い、ケンシくんの困った顔

喜怒哀楽を炸裂させながら1歩1歩進みつつ

禁煙を決意してまで“勝負”と位置付けた?鹿児島のケンシくんの両親への“ご挨拶旅行”もまた

行く前は散々泣いたり怒ったりしていたのが帰ってきて

“須藤さん聞いて”な話は笑顔しかなかった

 

“ドレス着るからダイエットするねん”

ある日ダイエット宣言をしながら数杯目のビールを呑み干したのりちゃんは

いつもと変わらないペースで

“須藤さんおかわり”とビールを注文した

更に“お腹すいたなぁ~カツ丼食べたい!!”と

おおよそダイエットには似つかわしくない単語がとびだした

迎えに来たケンシくんに

“カツ丼食べたいけど食べていい?”と甘え

“カツ丼♪カツ丼♪”と嬉しそうに連呼しながら

ケンシくんに手をひかれご機嫌に帰るのりちゃんは酔いはするが昔ほど酩酊しなくなった

手を引きながら諦めたような苦笑いを浮かべたケンシくんは優しい顔をした

お互いを思いやる2人だけの世界

2人にしかわからない世界

いい関係だねと心の中で呟いた僕はホッこりとした心地がした
(ダイエットは無理やな…)

 

先月そんなのりちゃんらしく辿り着いた幸せのお披露目となる結婚式に呼んで貰った

“馬子にも衣装”とはよく言ったもので!?

のりちゃんのドレス姿はなかなかに様になっていた

ヴァージンロードを歩きながら必要以上に色々な人の視線に目で応えている

のりちゃんと並び少し緊張気味に見えたケンシくんは

神父さんの“・・・な時も・・・な時も・・・・・・愛を誓いますか?”

と問われ

“はい!誓います!!”

と大声でまさに愛を叫んだ

会場には失笑にも近い笑いと意外性に驚く笑い、微笑ましさ故の温かい笑いにケンシくんの照れ笑い…

色々な笑いが溢れ交錯する中で

厳かに“誓います”といったのりちゃん

普段のキャラと真逆の2人のコントラストに

会場は幸せな空気に包まれた

 

その後爆音でのハイスタのステイゴールドでためにためてバズーカを持って皆の前に登場し

1歩前でしゃがんで呼吸を合わせたケンシくんの優しさと紙吹雪を

歓喜に沸く参列者に炸裂させた

花びらのシャワーを浴びながら

全身から迸る幸せを見せつける2人

何もかもがのりちゃんらしい素敵な式で

いつも通り弾けるように笑うのりちゃんは

傍らの見たこともないほどに感情をさらけ出し幸せそうなケンシくんと会場にいる全ての人を

のりちゃん色に染めた

 

これが先月僕が見たもう1つの大好きな2人の最高の幸せの軌跡

 

結婚式

大好きな人が幸せになる様、大好きな人の最高の瞬間

何度呼んでもらってもいつもいいもんだ

そんな幸せの坩堝幸せの連鎖の中にいる感覚は独りの実感

羨ましくは感じない

次は自分がとも思わない

幸せになりたくない訳じゃない

が…

トランキーロ!!

あっっっせんなよ!!

幸せが俺を追いかけろ!!!

 

2016 8 12 7:54

須藤 利浩

 

幸せのキセキ

4年以上も前からのオハナシ

そろそろ終わりかなと思った朝方に開いたお店の扉

“あっ”

思わず口をついて出た言葉は少しの驚きをはらみつつも良くも悪くもあまり感情のこもらないものだった

昨日も来てくれた近所のお店のマスターらしい若くてオシャレな彼に対して

僕は心の中でジャッジを下せずにいた

面白そうではあるが掴み所のない飄々した風貌は僕と合うようには思えなかった

彼から“好意”の様なものを感じる事も出来なかった

にも関わらず昨日に続いてのご来店

名刺交換をしながらのザックリとした自己紹介で

“ポンです”と言った彼との出会いはそんなありきたりで特別ではなかったと記憶している

 

その後、かなりの頻度で色々な人を連れて来てくれた

回数を重ねる毎にうっすらとした初対面の相手に対する感情の防御壁は崩れ去り

彼の人間性に触れるやすっかり彼の魅力に魅せられた

ある日淀川の河川敷にて朝っぱらから呑んでいた時の事

生い茂るクローバーを見ながら

“よつ葉のクローバーなんて幻や!そもそも幸せが幻やからな!?”

と訳の解らない事を言いながら酔っぱけていた僕に

“須藤さん!!”

と満面の笑みを浮かべ呼びかけたポンちゃんの手にはよつ葉のクローバーが!

1分とたたずに幻の幸せを探し出してきた

感心する僕は次の瞬間更に驚愕することになる

“好き、嫌い、好き、嫌い アカン嫌いやあ!!”

???!!??!?!!!

4枚でまさかの花占いならぬ草占い

幸せを見つけるセンス、瞬時にそれをベットする潔さ、それら全て笑い飛ばせる器の大きさ!!!

4年半前の春の衝撃

 

“ちょっといい娘がいるんですよ、エニーさんの知り合いなんですけど…”

他人の色恋にさして興味なんぞはないが

楽しそうな笑みを浮かべながら話すポンちゃんを見るに少し興味がわく

その見つけたものはただの暇つぶし的な興味なのか

些細な楽しみの種か未来の大いなる幸せの芽なのか

“スタイルがよくてノリがいいんですよ”

と聞いていた通りアサミちゃんは確かにスタイルは良かった

ノリも良かったというかノリに関してはスタイリッシュな外見からは意外なほど

もはや“大丈夫か”と思うほど良すぎた

今はなき朝の“しょんべん横丁”に呼ばれて来たアサミちゃんは疑いようがないOLだった

ここは朝のOLさんの来る場所ではない

またある時は

“今日はお腹が痛いので休ませてください”

と会社に電話し

“やっちゃった笑い”を浮かべるアサミちゃんの右手にはしっかりと酒の入ったグラスが握られていた

おいおい社会人失格ですよ

ノリの良さから色々と笑いを提供してくれた彼女ではあるが

何より僕を驚かせたのはアサミちゃんの“愛情に対しての真っ直ぐさ”だった

 

そもそも初めて会った時から分かり易くポンちゃんに対する愛情は見て取れた

周りに“好きさ”をアピールしている煩わしさは全くなくただ“好きさ”が溢れている

こういう正直な娘は好きだが

次々に幸せを見つけ新たな環境を創り出しアクティブに動くポンちゃんに

アサミちゃんの愛情はまっすぐ過ぎる気がした

事実、芳しくない話しをよく聞かされた

話は聞いてあげれるが僕はいつも自分のスタンスを明確にする

僕はポンちゃんの友達でありポンちゃんあってのアサミちゃんであり

ポンちゃんあってのアサミちゃんでしかない以上余計な協力はしない

ポンちゃんからは別れる旨の話を何度も聞いた

傍から見ていて2人の幸せは想像しがたく難しいように思えた

 

昔ある人が言っていた

人間には2種類ある

人生色々な事があり悲しくて泣く事もあるだろう

そしてやがて泣き止んだ時に強くなるのか、弱くなるのか

アサミちゃんはよく泣いていた

ポンちゃんの名誉の為に言っておくが

ポンちゃんが悪いと言うよりも些細な事でよくピーピー泣いていた訳ですが
(色々な人が色々な場所で色々な場面で目撃していた事でしょう)

その度に強くなっていったように見えた

泣きながらも必死に寄り添い離されないようについていく様は

健気ではじけるように美しかった

奇跡が起きそうな気がした

奇跡は起きようとしていた

2人の最高のカタチ

 

数年後朝方に1人でポンちゃんが呑みに来てくれた

“今日は喧嘩したから帰りたくないんですよ。須藤さん呑みに行きましょうよ”

十三にて久々の二人呑み

“今日も・・・で・・・で腹立ったから婚姻届破ったりましたわ”

ん?!

思ったより話は進んでるようだ

酒がみるみる胃袋に流し込まれていく

珍しく愚痴るポンちゃんの話を聞きながらも随分前から感じていた感情が時折顔を覗かせる

クールな彼があまり人に見せようとしないが隠せなくなっている

アサミちゃんへの愛情

 

10:00am過ぎまで呑みもうそろそろ帰ろうと店を出た

“須藤さん役所に行きたいから付き合ってくれません?”

なんとなく話はみえたが僕は基本的に性格が悪いので敢えて聞いてみる

“いいけど何しに行くん?”

“いや~破ってもーたから婚姻届貰いに行こうかな”

照れ笑いが素敵過ぎる

“また破るかもしらんから念のため6枚もらっとこ。後、離婚届も2枚やな”

でた!!相変わらずブッ飛んだポン発想!!

“須藤さんも貰っといたらいいですやん。何があるかわかんないっすよ”

確かにね

でもその何かは6枚全部破ってもた時にって事にしとくか

結局最後は笑顔やもんなとつられて笑顔になりながら帰ったその日の数日後

最高の笑顔で2人婚姻届を見せるその姿をFBで見たのだった

 

そして先日結婚式に呼んで貰った僕は

舞い上がる風船を眺め

テキーラでの乾杯という未だかつて体験したことのない乾杯をしながら

“昔知り合いの結婚式で全員でテキーラで乾杯ってした事あるわ”

と誰かに一生話し続けるんやろうなぁと思いつつ

この2人といると常に笑顔になるよなぁと

溢れる笑顔と未来の素敵な思い出話を貰いながら

ご機嫌すぎる2人の姿を見てなんとも言えず幸せな気持ちになった

 

これが4年半前から僕が見てきた大好きな2人の最高の幸せの軌跡

 

2016 8 4 7:48

須藤 利浩