無人の店内にて考えた
“智に働けば角が立つ
情に掉させば流される
意地を通せば窮屈だ
とかくに人の世は住みにくい”
大好きな夏目漱石は草枕の有名な冒頭部分であるが
今まさにそんな心境である
あの日カウンターで
今まで築いてきた“心”が壊れた音を聞いた…
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この数ヶ月色々な事があったのは確かである
かと言って決定的な何かがあったとは思わない
それなりに凹む事もあったが
それなりに楽しい事もあった
合う話も合わない話もひっくるめて
いわゆる通常運転といえる日々
冬の鬱屈の炸裂、夏の浮かれた陽気の崩壊
概ねそんな時季に心が侵されるのが常である
定期的に襲われる世間とは隔離された流行り病は
自分自身のキャパを越えてしまったらしい…
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許されるならば誰と絡む事なく1人没頭できる仕事が良い
だが“バーテンダー”などという因果な商売を選んだ故
それは許されない
好きでやっている仕事である
接客という色々なお客様との絡みを否定するつもりは毛頭なく
ましてや不平不満を撒き散らすつもりはないばかりか
むしろ心外ですらある訳だが
意図せず加速していく閉鎖感に
気持ちにゆとりがなくなり心が狭まる感覚
いつも通り、もしくはカラ元気という仮面をつけて
いつも通りな接客のフリをする
そんなくだらない店に誰がきてくれるのか
わかってはいるが今は仕方がない
如何せん上手く笑えない…
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完璧さを求めている訳ではない
求めるに足る努力らしきものができていない自覚はある
それは嘆きには値しない
それでも感情の不安定さが肉体の疲労を倍増させる
感じている理解と感覚のズレ
ズレた感情を元に戻す術を持ち合わせていないなら
堕ちればいい
堕ちるだけ堕ちる所まで堕ちきったならば
後は上がるだけなのはもとより承知だが
生きるという当然の許された権限に伴うしがらみは
足掻きという足枷となり
堕ちる事すらままならない…
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希望、失望、欲望、絶望
“望”という方向を示す何かしらがあるならば
上がるにしろ堕ちるにしろ浮かぶにしろ沈むにしろ動くしかない
それがどこだっていい
それを望んでいるのだから
受け止める覚悟はある
ただ今いる位置がつかめない
ぼんやり漂うには
今は余裕がなさすぎて精神衛生上よろしくないし
そこまで自分を諦める気にもならぬ
それでも動けない…
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ただそこにある事実を自分というフィルターを通し
誰もがそれを真実として疑わない
そんなものを感情という不確定極まりないものにのせてすり合わせたとて
何がうまれるという訳でもなく
意味などあるまい
共鳴しない心の視線という刃が刺さる事はない
それでも緩やかに心は削られ腐敗していく
思考が鈍り追いつかなくなる事にともなう自信の揺らぎ
それはそれで悲しい事だし
自分の本意ではない…
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“事実は1つ真実はそれぞれの中に人の数ある”
というなら
正解というのもまた人の数ではなかろうか
僕の正解は恥ずかしながら未だわからない
聞こえた気がした壊れた音が何かもわからない
僕の中の真実が
何かしら世間みたいなものとズレた音だった気はする
恐怖でしかないとはいえ
変化を恐れるつもりはない
ただ同様に安易に変えようとも思わない
それはそうだ
長い年月をかけて創りあげた
僕の一番大事なコアというべきものなのだ…
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とりとめもなく考え事をしている訳だが
今この状態で何を考えたとて
病んだ方向へ引っ張られるのは必然だ
どうせなら自分自身がなんてちっぽけなんだと感じざるを得ない壮大な事を考えてみよう
そうだ!!
ずっと行きたかった長崎県に行ってみよう
平和記念公園にて世界平和について考えてみよう
軍艦島にも行ってやろう
そしてチャンポン食ってトルコライス食って海の幸を満喫しよう
どのみち答えがでようはずもないなら
ほんの少しでもご機嫌でいるべきだし
少なくともその方がずっと自分らしくいれる筈だから…
という訳?で
9月17日はBAR CLAYMOONは臨時休業でございます
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2024 9 17 0:31am
須藤 利浩